天国から来た悪魔
第八話 何か忘れていませんか?


 ピリリリリ……ピリリリリ……
 携帯電話の呼び出し音で、隆は心地よいまどろみから引き戻された。今時、着メロにしていないのは珍しい部類に入るのだろうが、隆はそんなことには全くこだわらなかった。携帯電話などただの道具、飾り付けることなど全くせずストラップすら付けていない。
 目を閉じたままベットの横に置いてあるサイドテーブルに手を伸ばしたが、ミルが腕をしっかりと握ってスヤスヤと寝息を立てているので届かない。たたき起こしてやろうかと思ったが、自分もかなり眠いのでそれ程元気はなく、片目だけ開け携帯電話がどこにあるか確認すると手をかざした。すると携帯電話が隆の掌に飛び込んできたではないか、これも隆の持つ七つの能力の内の一つ《念動》だった。今は眠いのであまり集中できないが、調子の良いときであれば自分の体重くらいの物は動かせる。
 携帯電話を取った隆は、何の遠慮もなく眠さ全快のまま電話に出た。
「はい、もしもし……何だ克英か……今何時だと思ってるんだよ…………えっ……もうそんな時間……解ってるってちゃんと行くよ……でも、やっぱ授業は受けないわ、急いで行っても間に合いそうもないしな……ああ……行くからいつものところで待ってろよ……ああ、じゃあな…………ったく、もうそんな時間かよ。何か今日は寝み〜なぁ〜……」
 携帯電話で時間を確認してみると既に12時を過ぎていた。本当は1時に大学で待ち合わせをしていたのだが今から行っても間に合わない。今日の授業は受けておきたかったが起きられなかったのだからしょうがない。克英もどうせ時間通りにこないだろうと思い授業が始まる前に電話をしてきただけのことだ。
 携帯電話をサイドテーブルに戻し、腕が動かない原因を見た。ミルは衣装を着たまま可愛らしい寝顔で腕にしがみついていた。そう言えば昨日は裸に剥くことなく衣装を付けたままし続けたのだった。
 しかし、神人のミルがこれ程深い眠りについていることは珍しい、考えてみるとミルの寝顔を見るのは初めてだ。何時も隆の方が先に眠りにつき、朝は必ず朝食の用意をして隆を起こしに来てくれていたのに、昨日の乱暴で激しいSEXがいけなかったのだろうか、ミルは携帯電話が鳴ろうと隆が動こうと全く起きる気配を見せなかった。
 隆の横で寝ていることが解っているのか、幸せそうな笑顔を浮かべしっかりと腕を抱きしめている。こうしてみると本当に悪魔には見えない(まぁ正確に言えば悪魔見習いなのだから仕方がない)今はかろうじて衣装(?)に付いている触覚と尻尾だけが悪魔らしいと言えば悪魔らしい。触覚はミルの浅い呼吸に合わせ小さく上下し、尻尾は寝ぼけているのか隆の足に絡みついている。
「う〜ん……可愛らしいことは可愛らしいんだが……どうもいじめたくなる……寝顔見るのも初めてだから何か悪戯しないと損だよな」
 電話で目を覚ました隆は、まだ寝ぼけてはいたが人差し指でミルの小さな鼻を潰した。
「ううぅ〜ん……」
 本当によく眠っている。僅かな反応を見せたが一向に起きる気配はない。
「ホント良く寝てるな……こんだけよく寝てるんだから寝かせておいてやりたいが、この尻尾が邪魔をしている。叩き起こさなくては俺が出かけられん」
 珍しく仏心を出そうとしたのだが、このままでは大学に行けなくなってしまう。隆は、掌で鼻と口を押さえた。
「どのくらい持つもんだろうね……」
 普通の人間なら直ぐに反応を示すだろうがミルは神人なので、どのくらい持つのか少しだけ興味がある。しかし、隆の期待を裏切るように直ぐにミルの表情が変わっていった。
「うぐぐぐぐぐぅぅぅぅぅぅ……」
 抱きついていた手を離し、口元にある手首を掴むと大きく目を見開いて必死に抵抗し始めた。隆も目を覚ましたのだから離してやれば良いものを意地悪をして離そうとしない。脚をバタつかせ、本当に苦しそうな表情をし始めたので仕方なく手を離してやった。
「プハァァァ……たたたた……隆様殺す気ですかぁぁぁ〜……はあはあはあ」
「何だお前らもあんま持たないんだな……」
 あまりにも普通の反応に残念そうな顔をしている……ミルの言っていることなど全く聞いていない様子だった。
「はあはあ……隆様……なんてことするんですかぁぁ〜……聞いてます?」
「ああ、聞いてるぞ。なんて事って……ただ起こしてやっただけだが、いけなかったか」
「起こしてくれるのは嬉しいですけど起こし方の問題です。死んじゃうかと思ったじゃないですかぁ〜」
「そうか……お前らでも死ぬことあるのか知らなかった。覚えとくよ」
 この言い方……全く悪いと思っていない。まぁ本気で殺す気など当然あるわけがない。隆自身は冗談のつもりでやっているのだが、いくら何でも冗談がきつすぎる。しかし、その屈託のない笑顔を見てると怒っている自分が馬鹿馬鹿しく思え、ミルは小さな溜め息をついた。隆がこういう人間であることなど前から解っていることだが、それを改めて再確認した。
「本当に覚えておいて下さいよ……それにもう少し優しく起こしてくれるとかは考えなかったんですか……せめて揺り起こすぐらいの事を考えてくれれば良かったのに……」
「何を言ってるんだ。始めは鼻をつぶして起こそうとしたんだぞ、それで起きないのがいかん! それにお前の考える優しい起こし方とは一体何だ?」
 鼻をつぶして起こそうとするのもどうかと思うが……ミルの考えている優しい起こし方とは一体どんなことなのだろうか、まぁなんとなく予想はつくが……
「そうですね。せめて優しく抱きしめてキスをして起こしてくれるなんて良いんじゃありませんか……ねっ。 隆様もそう思うでしょ」
 やはり予想通りの答えだった。
「お前は何を期待しているんだ。そんな気持ちの悪いこと出来るわけないだろ」
「そんなことないですよ……きっと素敵な目覚め方が出来ますよ」
「それじゃ、もし仮に俺がそんな起こし方をしたらお前はどう思うんだ……何かたくらんでると考えるんじゃないのか」
「うっ…………」
 確かにその通りだ。そんな起こし方は隆のキャラクターになどない……もし、そんな起こされ方をしたら真っ先に疑うことだろう。
「……ホラ見ろ。そんなつまらない事考えてないでメシの支度しろ……それに、その衣装着替えろよ。どうもムラムラして仕方がない……用意が出来たら起こしに来てくれ、それまで俺はもう一眠りする」
 と言って、横になると直ぐに寝息を立て始めた。何時も思うことだがなんと隆の寝付きが良いことだろうか……でも、この寝顔を見ていると何故か幸せな気分になってしまう。非道いことを言われるが、本気で言っていないのは解っている。今も、シャワーを先に浴びさせてくれるためにこんな行動を取っているのだろう。都合の良い考えかも知れないが、ミルにはそう思えてしょうがなかった。
「さぁ……シャワー浴びて、ご飯の支度しようっと」
 隆の頬に軽くキスをしてから、静かに部屋を出るのだった。

「隆様、起きて下さい。ご飯の支度できましたよ……もう、隆様ったら」
 白のTシャツにデニムのホットパンツを履いたミルが隆の躰を揺すっている。昨日のセクシーな格好よりもこういった活発的な格好の方がミルには似合っていた。
 寝付きは良いのだが、起きるのは不得意らしい。ミルがここに来た当初はこんな事はなかった。ベットルームの扉を開けただけで起きてしまうほど敏感だったのに、今では揺り起こそうとしても、全く起きてくれない。それだけ、気を許してくれていることなのだろうが、これはこれで困る。だが、そんな隆の寝顔を見て、ミルはにんまりと笑った。
「しょうがないなぁ〜隆様……それじゃあ、理想の起こし方というのを教えてあげます」
 ミルは、隆の上に横たわるとそっと抱きしめキスをした。先程言っていた理想の起こし方を実践してみたのだ。
──はあぁぁぁ……何だか私が幸せな気分になってきちゃった……
「隆様……起きて下さい……朝ですよ……うっん……」
 ミルは自分に酔いしれるように、唇を貪っている。これだけやればいくら鈍感な隆でも目を覚ますだろう。
「うううぅぅぅ……」
 隆のうめき声が聞こえ、カッと目が見開かれた。慌てて頭を鷲掴みにするとミルを引き剥がしたのだった。
「おはようございます隆様。 どうですか良い目覚めだったでしょ」
「良くない! 気色悪いだけだ」
「そんなことないですよぉ〜……私は凄く良かったですよ」
「それは、自分勝手な言いぐさだ。人というのは他人と重なり合って生きているんだから、相手の事を考えなくてはいかん。俺は気色悪いからその起こし方は禁止だ」
 そう言うとミルをベットに放り投げ、ベットルームを出て行きバスルームへと向かった。まさか、隆の口からその様な言葉が出るとは思わなかった。まぁ、自分勝手の局地のような性格をしているのだから、暗に「俺の事だけを考えろ」と言っていることなのだろう。
「もう、キスぐらいしても良いじゃないですか」
 ミルは、唇を少し尖らせてキッチンへ向かった。

 食事を取り終えた隆は、席を立ち壁に掛けてある車のキーを取った。
「隆様、お出かけですか?」
「ああ、今日は大学に行ってくる」
「じゃあ、少し待って下さい。直ぐ用意しますから」
 ミルも席を立ち、エプロンを外そうとする。最近大学に行く時は、何時もついていく事になっていた。
「いや、ちょっと用事があるからお前は留守番だ」
「えぇ〜……解りました」
 不平の声を上げた瞬間、隆に睨まれたので引き下がるしかない。ミルは素直に引き下がった。
「それより、部屋の掃除と洗濯しておいてくれ……小百合が来てるとそんな暇ないからな……溜まってるから、よろしく頼むぞ」
「……解りました……いってらっしゃい……」
 少しふくれっ面をしながら玄関まで見送りに行く、そして最後の抵抗を見せるように隆の肘を摘んだ。
「うん……なんだ?」
 隆が振り返るとミルは少し俯いて小声で何か言おうとしていた。その顔をのぞき込むと頬が紅くなっている。
「何だよ。何顔赤くしてるんだ」
「あの……あのですね……お掃除もお洗濯も頑張りますから……あの…………スしてください……」
 小さな震える声で言っているので何を言っているのか解らない。
「お前らしくないな、ちゃんと言えよ。もう行かなくちゃならないんだから」
「あの……キスしてくれたら、もっといっぱい頑張れますから……して下さい……」
 それだけ言うとまた俯いてしまった。隆はその反応をあきれ顔で見ていた。あれだけ色々な事をしてると言うのに、何故キスをせがむくらいで恥ずかしがっているのだろうか……
「くだらないこと言ってるなよ……行くぞ……」
 行こうとする肘を更に強く握った。
「良いじゃないですか……私にも少しくらい優しくしてくれても……行ってきますのキスぐらいさせて下さいよ……」
「しょうがねぇ〜なぁ〜」
 隆は嫌々ながらもミルを引き寄せた。
「何だよ。こっち向けよ」
 こんな素直にしてくれると思わなかったので、胸が高鳴り恥ずかしさで俯いたままになっていた。それでも、ミルは顎を上げ首に抱きつくと唇を重ねたのだった。
 舌を入れない普通のキスが、新鮮でミルの心をとろけさせていく……
──これ……これなの……こう言うのがしたかったの……
 唇が離れると隆は優しくミルを降ろしてくれた。なんだかんだ言ってもそこら辺は優しい。
「これで良いんだろ……んじゃ、行ってくるからな。部屋かたしておくんだぞ」
「はい、行ってらっしゃい。」
 これだけの行為でミルは、下界に降りてきて最高の幸せを感じてた。扉が閉まると拳を口元に当てピョンピョン跳ねて喜びを表していた。
「わ〜いわ〜い……しちゃった……行ってきますのキス……えへへ……さぁ、お掃除頑張ろっと……」
 ミルは小走りでリビングへ戻った。先ずは朝食の片付けだ。先程の事を考えると自然と笑顔がこぼれてしまう。ミルは終始笑顔で作業を続けた。
 気分が弾んでいると作業もはかどる。まぁ食器を片付けるなど大した時間は掛からないのだが、何だかいつもよりはかどったような気がした。最後の食器を拭いて食器棚に片づけると直ぐ洗濯に取りかかる。
「さ〜て、今度はお洗濯。 お洗濯。」
 まず、ベットルームへ行きシーツを剥がした。本当は昨日も小百合を抱いた後のシーツで抱かれるのは嫌だったが、挿入されると直ぐにそんなことは忘れてしまった。それに、シーツにはうっすらと残っている大きなシミは小百合の形跡をかき消している。どんなに濡れる女の子でも神人のミルほど濡れる女の子はいない。
「へへへ、あんな人間に負けないもん……隆様を私の魅力で虜にしてやるんだから」
 昨日の衣装を着て、再び隆の前に立つ姿を想像した。隆はミルの魅力に瞳を虚ろにさせ跪き、胸に顔を埋める……そんな隆の頭を愛おしく抱きしめると二人はそのままゆっくりとベットに沈み込み優しい愛撫にミルの躰は溶け出した……
──あああ……なんて素敵なんだろ……それから隆様は私の躰を求め続けるの……そして昨日みたいに激しく……
 そんな妄想で頭がいっぱいなっていると、昨日の激しいSEXが鮮明に思い出された。
「あん……やだ……思い出しちゃった……」
 昨日あれだけ、やったというのに少し考えただけで躰が火照ってくる……お尻を抱えられ何時間も同じ体位のまま攻め続けられた。意識が飛びそうになる心地よい感覚が僅かながら躰に甦ってくる。
「はあぁぁぁ……ダメェェ……」
 シーツを抱えるようにミルはベット脇に膝を付いた。ほんのりと残る隆の匂いがミルの躰を更に刺激する。もうこのままでは耐えることが出来ない。
「隆様と約束したのに……頑張るって約束したのにぃ〜……」
 甦った感覚だけで股間からは愛液が流れ出し太腿を伝っていた。隆の温もりを探すように、シーツを腕に絡ませ股間に押しつける。それだけで、ミルの躰には快楽が突き抜けていった。当然隆に触られるほどではないが、自分でやってもかなり気持ちが良い……そう言えば、オナニーなどいままで一度もしたことがない。
「押しつけてるだけで気持ちいい……感じちゃうのぉ〜……」
 腰がガクガクして力はいらなくなってくる……ミルは床にぺったりとお尻を着いてしまった。そして、ホットパンツのボタンを外しチャックを下げるとパンティーの中に手を突っ込んだのだった。
「はああぁぁぁ〜ん……直に触ると凄く気持ちいい……もう止まらないよぉ〜……隆様ごめんなさい……これが済んだら頑張りますから……一度したら……やりますからぁ……J
 パンティーの中は既に愛液でいっぱいだった。いやらしい音を立てて愛液が指に絡みつく……ぬるぬるした感覚が、もの凄く興奮を高めてくれる。初めてするオナニーでも、ミルの躰は素直に反応してくれた。自分でも何処を触れば気持ちいいか熟知しているのも快楽を高めてくれる原因だった。
「あん……はあぁぁ……もう直ぐなの……もう直ぐ……くるの……はあぁぁ……でも……自分でイッちゃうなんて……恥ずかしいよぉ〜……でも…でもぉ……ダメ……もう来る……そこまで……うぐぐううぅぅぅ……」
 両目をしっかりと瞑り、喘ぎ声を出さないように必死で我慢した。せめてそのくらい我慢しないといけないような気がしたのだ。
 パンティーの中に手を入れて数十秒……その僅かな時間でミルは絶頂を迎えていた。なんと言う早漏女なのだろう。
「……はあぁぁぁぁ……いっちゃった……いっちゃったよぅ〜……私一人でやっちゃった……恥ずかしぃ! はぁ。 気持ちよかった……一人でも気持ちよくなれるんだ……でも、隆様にして貰った方が気持ちいいよね……隆様ならこうやって触ってくれるもん……」
 瞳をトロ〜ンとさせ、妄想に耽りながら再び指を動かし始めた。
「あんっ……あれ……私…何してる……の……はあぁ……一度で……あっ……止めなくちゃ……いけないのに……はああぁぁぁ……これじゃ止められない……隆様……もう一回……もう一回だけ…………」
 隆が触ってくれるように激しく腕を動かしてみる……しかし、ホットパンツとパンティーが邪魔で、旨く動かすことが出来ない。これくらいのことでは我慢できなくなっていたミルは、歯を食いしばり無理矢理秘裂から手を離すとベットに手をついて上体を浮かせ膝建ちになる。
「はあはあはあ……邪魔……こんなの履いてられない……」
 そう言って、興奮で震える手をホットパンツに掛けずり降ろす。そして、そのまま上体をベットに投げだした。
「はぁぁ……これで邪魔な物がなくなった……」
 何ともいやらしい体勢になっている。膝は床に着いたまま上体のみベットに寝かせ太腿の間から手を出し秘裂に指を突っ込んでいる。しかも、指を差し入れる度に秘裂からは溢れた愛液が空気を含み白濁して流れ落ちていく。もし隆が見ていたら喜んだことだろう。
「はああ……はああぁぁ……凄い……凄いよぉ〜……隆様……もっと……もっとしてぇぇ……そうしたら……ミルイッちゃうの……はあぁぁぁ〜ん……来るよぉぉぉ……隆様ぁ」
 頭の中では、昨日のように後ろから犯されているのだろう……指の動きは更に速くなり、卑猥な音が部屋の中で旋律を奏でている。
「はぁ……ダメ……そんなにしたら出ちゃう……出ちゃうよぉ〜……はあぁぁダメ……止まらない……出る……出るっ!」
 指の隙間から愛液とは違う、雫が噴き出しフローリングの床を塗らしていく……雫が窓から差し込む光にあたりキラキラ輝いていた……全て吐き出すと快楽で反り上がった躰がベットへ崩れ落ち、幸せそうな笑顔がミルの口元からこぼれ落ちていた。
「はあはあはあ……出しちゃった……凄く気持ちいい……自分でやるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった……これなら、小百合が来た時だって我慢できそう…………ううん、嫌だ! 何で、あんな奴の為に我慢しなくちゃならないの……て言っても我慢しなくちゃならないんだよなぁ〜……無理言うと隆様に嫌われちゃうもん……なんて可愛そうなんだろ私って……もう少し隆様が私に優しくしてくれれば、もう少し我慢できるのに……悲しいな……何だか一人でしてたのが寂しくなってきちゃった……」
 何だか、涙が出そうだった。それでも、どんな非道い仕打ちをされようと我慢しなくてはいけない……そうしないと隆の側に居られなくなってしまうのだから……せっかく、初めてオナニーをしたのに、何となく落ち込んでしまった。これからは他の女の事を考えないようにしよう。自分が隆を好きなことは変わらないのだから、他に誰が居ようと関係ない。それに、隆は優しくしてくれると時もある。それは、どんな女にも見せないミルにだけしてくれる優しさだ。いつもではないが、たまにしてくれる優しさがもの凄く嬉しいのだから、今はそれで良かった。
 ミルはベットから上体を起こすとまだ愛液を流し続ける秘裂から手を離した。
「はぁ、まだこんなに濡れている……でも、もうやる気も失せちゃった。お洗濯しよっと、隆様帰ってくる前に終わらせなくっちゃ……」
 投げ出されたシーツを取るとミルは愛液をシーツで拭き取った。どうせ洗うのだから汚しても構わない。そして、パンティーを履こうと思ったが、こんな濡れてるパンティーを履いたら気持ち悪いだろうから、ホットパンツと一緒にパンティーも脱いだ。これも洗濯機行きだ。
「あ〜あ、こんなに飛び散ってる……これもシーツで拭いちゃえ」
 下半身裸のまま、飛び散った雫を拭き取り、やっとベットルームを出てバスルーム横に置いてある洗濯機の前に行った。
「ありゃりゃ……本当にいっぱい出てるぅ〜……何でも三日間でこんなに出るのぉ〜……」
 と思うくらい大量の洗濯物が籐の籠の中に積まれていた。殆どがタオル系であったが、それでも出過ぎではないだろうか。
「もう、こんなにあるんじゃ大変だよ……先ずはシーツから洗わないとね」
 ミルは今持ってきたばかりのシーツを洗濯機に押し込んでスイッチを押した。全自動洗濯機はこう言う時が楽だ。何回か同じ作業をしなくちゃいけないが、その間に部屋の掃除もベットメイキングも出来る。
 これからの段取りを考えているときやっと下半身に何も履いていないのを思いだした。
「あっ……下半身丸出しだ。パンツくらい履かないとねぇ〜」
 独り言を言いながら納戸へ向かい下着を着け、スカートを履く。一瞬、出かけた時と格好が違うので何か言われるかとも考えたが、きっとミルがどんな格好をしていたかなど隆は忘れているだろう。
「そうだ、ついでだから私のベットのシーツも洗っちゃお! 余り使ってないからって言っても汚れてるだろうからね〜」
 ミルは、鼻歌交じりで自室へと戻っていった。そこに、恐怖が待っているとも知らずに……
 そして、勢いよく扉を開けベットに近づいてある物が目に付いた……出窓に貼ってある魔法陣が
……
 ミルの笑顔が一瞬にして固まり蒼白になっていく……来ているのだ。テストの結果が……強制配達された手紙は〈トランスミッションペンタクル〉の上にしっかりと乗っていた。
 今の今ままで、綺麗さっぱりテストをやったことを忘れていた。ミルは額から汗を流し、生唾を飲み込みながら右手を封筒に伸ばしたのだった……

第八話「何か忘れていませんか?」終
第九話へ続く
拍手を送る

動画 アダルト動画 ライブチャット